1996 年 29 巻 11 号 p. 2170-2174
非常にまれな膵原発somatostaminoma (以下, 本症) の1例を経験したので, 自験例を含め16例の本邦報告例を集計し, 若干の文献的考察を加えて報告する.症例は65歳の女性. 人間ドックで膵頭部腫瘤を指摘され精査目的にて当院を紹介された. 75g経口糖負荷試験にて境界型の耐糖能障害を認めた. 膵頭部に, 腹部ultrasonogramでhypoecholcを示し, computed tomography, magnetic resonanceimagingにて造影効果著明で, 血管造影でも, 血管増生の著しい腫瘤を認めた. 画像診断よりラ島腫瘍を疑い, 末梢血中のsomatostain濃度が, 50pg/ml (正常値1.0~12pg/ml) と高値を示したため本症と診断し, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 切除標本では, 膵頭部に限局する径約3cm大の類円形腫瘍を認めた. 組織学的には良性のラ島腫瘍で, 免疫組織学的にはsomatostatin抗体陽性であった. 術後1か月目の末梢血中somatostatin濃度は1.0pg/ml以下に低下した. 術後8か月を経過した現在再発の兆候はみられない.