日本消化器外科学会雑誌
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腎細胞癌の多発性膵転移に対し膵全摘術を施行した1例
岩川 和秀松本 康志渡辺 常太小野 芳人嶌原 康行小林 展章
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1996 年 29 巻 11 号 p. 2175-2179

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抄録

腎細胞癌は一般的に肺, 骨, 肝臓への転移が多く, 膵臓への転移は剖検例では6%にしか認められておらず, 非常にまれである. また膵臓へは多発性に転移することも多いため診断および治療に難渋する. 今回我々は, 腎細胞癌の診断にて原発巣と脳, 甲状腺への転移巣切除術施行し, その4年後に多発性膵転移を来したため, 根治的に膵全摘術を施行した症例を経験したので報告する. 症例は52歳の女性で, 脳転移により腎細胞癌が発見され, 脳転移巣および左腎摘出術施行し, 半年後に甲状腺転移巣切除を受けた. 4年後に血便を主訴に来院, S状結腸に隆起性病変を認め, 同時に腹部CT検査と血管造影にて膵臓に多発性病変を認めたため, 転移性膵腫瘍とS状結腸癌の診断にて膵全摘術とS状結腸切除術を行った. 組織診断にて膵腫瘍は腎細胞癌の転移と確定診断した. 腎細胞癌の多発性膵転移症例は, ほかに有効な治療法のない現在では, 膵全摘術の適応になりうると思われた.

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