日本消化器外科学会雑誌
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腹部大動脈瘤を伴った消化器悪性疾患に対する手術症例の検討
田口 泰山崎 達雄安西 春幸松本 隆長島 直樹大畑 昌彦小山 勇尾本 良三
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1996 年 29 巻 11 号 p. 2215-2219

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抄録

消化器悪性疾患に腹部大動脈瘤 (AAA) を伴った6例を経験したので報告する.1991年1月~1994年12月までに経験した非破裂性AAAは57例で, その内消化器癌を合併した6例を対象とした.男5例, 女1例で胃癌4例, S状結腸癌1例, 直腸癌1例であった.AAAの手術適応は径5cm以上とし, 無症状の場合はまず癌に対して手術し, 2期的に人工血管置換術を施行.合併疾患, AAA最大径, 癌の進行度, 術後合併症, 予後について検討した.6例すべて経過良好で退院したが, 冠動脈病変のほか貧血, 腎機能, 呼吸機能障害を認めた胃癌の1例は術後6か月後急性心不全で死亡.胃癌のみ手術を施行した2例中1例は7か月後癌性腹膜炎, 他の1例は2年2か月後再発で死亡.その他の3例は生存中である.以上より, 2期的な手術は安全だが, 進行癌および冠動脈病変など合併疾患を有する症例に対しては術後厳重なフォローが必要であると思われた.

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