抄録
食道未分化癌は比較的まれな疾患であり, 早期にリンパ行性・血行1生転移をきたし, 予後不良な疾患である. 今回, 当科で経験した食道末分化癌6例を, 臨床病理学的および免疫組織化学的に扁平上皮癌128例と比較検討した. 6例の内訳は男性5例・女性1例で, 平均年齢64歳であった. 5例に3領域リンパ節郭清を含む食道癌根治術を施行したが, 1例は非治癒切除に終わった. 病理組織検査では, 4例が小細胞型, 2例が非小細胞型と診断された. 根治術施行5例全例にリンパ節転移を認めた. 摘出リンパ節の転移度は12%であり, これは扁平上皮癌症例の8%と比較し高率であった. 免疫組織化学染色では, NSEが6例中5例・EMAが5例中1例陽性であった. EMA陽性症例はNSE染色でも陽性であった. 一方, CEA・Keratin染色は全例陰性であった. 免疫組織化学染色の結果より未分化癌特に小細胞型構成細胞が多方向分化能を有している可能性があると思われた.