論文ID: NSKKK-D-23-00060
本研究では,パンの生地改良剤として利用されている乳化剤やパン生地中に含有する臭素がクロロプロパノール類および類縁体に与える影響を明らかにした.英国食品基準庁の報告(2004)12)による先行研究で「パン生地にDATEMなどの乳化剤を使用すると,パン中の3-MCPD濃度が高くなる」との報告があったため,日本国内で製パン用に一般流通している乳化剤として,蒸留MAGおよび,それを原料として製造したDATEMを用いて食パンを試作した.パン生地に対し,乳化剤を対粉2.4%という過剰な量で添加した食パンにおいて,3-MCPDは水溶性画分で検出限界(1 µg/kg)未満であり,脂溶性画分は乳化剤を添加していないコントロール品と比較して差異はなかった.したがって,製パン行程中に3-MCPDは生成されず,これらの乳化剤が3-MCPDの前駆体でないことを明らかにした.また,パン生地中に含有した臭素から,臭素付加体である3-MBPDが生成されないことを確認した.