1998 年 31 巻 10 号 p. 2071-2079
大腸癌200例を対象として, 病巣内NCC-ST-439 (以下, ST-439と略記) に対して血清学的および免疫組織化学的発現と免疫染色陽性面積比 (positive area) を臨床病理学的諸因子の面より検索しその相関性から臨床的有用性を検討した. 染色様式は, 腺腔内面や分泌物に染色される apical や intraluminal typeが81.6%に, 細胞質が染色される cytoplasmic type が18.4%に観察された. 大腸癌症例でのST-439の血清学的陽性率は33%で, 免疫組織化学的陽性率は76%であった. 組織型別では血清および組織化学的発現とpositive areaは分化型に有意に高率であった. 進行度別では高度になるほど, 深達度が進むにつれ, 腫瘍径が大きくなるほど, 脈管侵襲, リンパ節転移および肝転移陽性例は陰性例に比較し, ともに発現率は高率であり, positive areaも高かった. 以上よりST-439発現は, 臨床病理学的進行度と良く相関し, 免疫染色の定量化も臨床的有用性が十分期待できる.