1998 年 31 巻 10 号 p. 2113-2117
33歳の女性の肝S3からS8におよぶ多発性転移 (H3) を有する直腸癌 (Rs, Ra) 症例に対し, 1期的にS3合併切除兼拡大肝右葉切除 (切除肝重量2,403g, 予想残存肝体積337ml) と低位前方切除術D2を施行. 術後, 肝不全や縫合不全を併発することなく軽快退院し, 術後2年6カ月を経過した現在, 肺転移を認めるが, 残肝再発を認めていない症例を経験した. H3を有する大腸癌症例であっても詳細な術前評価による理論的背景に基づいた肝, 大腸同時切除, 再建術は安全に施行でき, また, 1期的手術は2期的手術に比べ, 患者の負担が軽く, 担癌状態の期間を短縮させることができることから有用な手術手技であると考えられた.