1998 年 31 巻 11 号 p. 2235-2239
表在型食道癌の肉眼型分類においてO-Isep型の腫瘍は粘膜上皮下に胞巣を形成して発育する癌である.われわれは胸部下部食道のO-Isep型腺扁平上皮癌で, 食道固有腺導管由来と考えられた1例を経験した.症例は61歳の男性.1995年10月に健康診断にて食道の隆起性病変を指摘され当院を受診した.内視鏡検査で下部食道に16mm大の隆起性病変が認められ, O-I型食道癌の診断で食道亜全摘術が施行された.肉眼所見は16×10mm大のO-Isep型の腫瘍で, ヨード染色で境界の不鮮明な淡染を示した.組織学的には小胞巣状に増殖する癌で, 粘液を容れた食道腺導管に類似した小腺腔の形成と一部に角化傾向のある充実性胞巣を認めた.癌は粘膜固有層から粘膜下層に増殖し粘膜上皮との連続性は認められなかった.各種特殊染色, 電顕により癌の腺性性格は明らかであった.本症例は食道固有腺導管由来の腺扁平上皮癌と考えられ, 腫瘍形態と組織発生との関連が示唆された.