日本消化器外科学会雑誌
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31 巻, 11 号
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  • 梨本 篤, 佐々木 壽英, 田中 乙雄, 筒井 光広, 土屋 嘉昭, 牧野 春彦
    1998 年31 巻11 号 p. 2199-2205
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    術前診断にて根治切除不可能と判定した進行胃癌21例に対し, 1993年より術前化学療法 (NAC) としてFLP療法 (CDDP 50mg/m2, day 1 day 8, 5FU 333mg/m2 and Leucovorin 30mg/body, day 1-8) を2クール以上施行してきた.19例に手術がなされ, 18例 (85.7%) が切除可能であった.【成績】(1) PR例は12例 (57.1%) 存在し, 根治Bとなった症例が7例存在した.(2) 部位別奏効率は, No.16リンパ節転移64.7%, 原発巣47.6%, 肝転移40%, 腹膜播種11.1%であった.(3) 21例の50%生存期間 (MST) は322日, 1生率40.5%であった.PR12例はMSTが471日で, 無効例は209日であった.(4) 根治度別では, 根治BのMST 835日に対し, 根治Cは310日で17.5か月MSTが延長していた.(5) 治療関連死亡, grade 4は1例もなく, grade 3以上の有害事象は白血球減少19.0%, 貧血14.3%, 口内炎9.5%などで安全性が確認された.【結語】FLP療法によるNACは, 非治癒因子がNo.16リンパ節転移である場合に治療効果が期待でき, PR例および根治B症例には生存率の向上も認められた.
  • 竹尾 浩真, 山下 裕一, 大島 孝一, 菊池 昌弘, 白日 高歩
    1998 年31 巻11 号 p. 2206-2214
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Epstein-Barr virus (EBV) 感染と関連が深く, 間質にリンパ球浸潤が著明な低分化髄様胃癌gastric carcinoma with lymphoid stroma (GCLS) の10例, GCLSを除くリンパ球浸潤胃癌14例, 他の胃癌300例でEBV関連胃癌を検出し, EBV潜伏遺伝子EBNA2, LMP1発現と臨床病理学的所見からEBV関連腫瘍における分類 (位置づけ) を行い, EBVの性質, 癌進展への関与を考察した.またリンパ球浸潤との関連も検討した.EBV陽性率はGCLS群 (80.0%), リンパ球浸潤群 (57.1%) が他群 (7.7%) より高く, EBVはリンパ球浸潤と関連が深かった.またGCLS群, リンパ球浸潤群はリンパ節転移率が低かった (p<0.05).陽性例は全癌細胞にmonoclonalな感染が認められたがEBNA2, LMP1の発現はなかった.結果よりEBV関連胃癌はBurkitt's lymphoma (EBNA2-, LMP1-) あるいは鼻咽頭癌 (EBNA2-, LMP1+/-) などに属し, EBVは活性や永久増殖能はないが癌初期に感染し免疫応答から逃れ潜伏し癌進展に関わる可能性が示唆された.
  • 福田 洋, 余喜多 史郎, 田代 征記, 石川 正志, 三宅 秀則, 八木 恵子, 宮内 隆行, 原田 雅光
    1998 年31 巻11 号 p. 2215-2220
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌手術症例の初回術式について関連肝炎別に検討した.対象は遺残例を除くHBs抗原陽性例 (B群) 24例, HCV抗体陽性例 (C群) 67例で, B群で若年者に多く腫瘍径が大きかった.門脈侵襲, 肝内転移など予後に与える因子の陽性率は腫瘍径5cm以上の群で有意に高かったので, B群18例, C群63例の腫瘍径5cm未満症例について検討した.再発例はB群が4例 (22.2%), C群が36例 (57.1%) で, 再発様式はB群は2例 (50.0%) が残肝多発再発であったが, C群では多発再発は5例 (13.9%) のみで, 同側葉, 対側葉の別で差は見られなかった.[結論] 1.B群では肝機能が良好で再発様式も遺残再発が多く, 初回手術時に病巣をできるだけ大きく系統的に治癒切除すべきである, 2.C群では初回, 再発ともに多中心性発生と考えられる症例が多く局所のコントロールを目的とした支配グリソンを処理した部分切除で良いと考えられた.
  • 木村 圭一, 井戸 弘毅, 永野 秀樹, 利光 鏡太郎
    1998 年31 巻11 号 p. 2221-2225
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    当院において過去5年間に経験した急性虫垂炎症例のうち, 術前の腹部超音波検査にて虫垂炎と診断できなかった15例 (偽陰性群) と虫垂炎と診断できた230例 (真陽性群) とを比較検討した.両群間で年齢, 性別, 肥満度, 術前白血球数・CRP値, 術前体温には有意差が認められなかったが, 虫垂外径は偽陰性群で有意に太く (14.5mm vs 9.4mm, p=0.0045), 虫垂炎重症症例の割合は偽陰性群で有意に高かった (47% vs 20%, p=0.017).
    虫垂の描出困難の理由として, 虫垂が腹腔内の深い位置にあることによる腸管ガスによる障害と, 壊疽や穿孔による虫垂の層構造の破壊が考えられた.症状から虫垂炎が疑われ, 腹部超音波検査にて虫垂炎と診断できない場合は, 腹部CTなどの腸管ガスの影響を受けない検査を行うべきであると考えられた.
  • 佐々木 晋一, 北村 道彦, 鈴木 裕之, 鎌田 収一, 斉藤 礼次郎, 田口 幸生, 小川 純一
    1998 年31 巻11 号 p. 2226-2230
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌術後18年を経て再建皮膚管に扁平上皮癌が発生した極めてまれな1例を経験した.症例は73歳の男性.55歳時, 下咽頭癌に対し咽喉食摘術, 皮膚管 (Delto-pectoral skin flap法) による再建を施行された.また67歳時結腸癌の既往があった.下咽頭癌手術から18年後, 嚥下困難のため精査したところ再建皮膚管内に扁平上皮癌の発生を認めたため, 皮膚管切除術, 遊離空腸による再建を行った.腫瘍はポリープの融合状病変で, 組織学的には高度の慢性炎症像を伴っていた.皮膚管に対する食物や消化管分泌物の機械的, 化学的刺激による慢性炎症を基に, 隆起性病変が前癌病変となり癌化する可能性が示唆された.皮膚管による再建は, ハイリスク患者や再建消化管臓器に適切なものがない場合などは依然として有用と考えられるが, その場合には長期的観察が必要である.
  • 中村 昭博, 伊藤 重彦, 井手 誠一郎, 田川 努, 中谷 博之, 長谷場 仁俊, 小松 英明
    1998 年31 巻11 号 p. 2231-2234
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下手術により切除した, きわめてまれな食道壁内神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は59歳の男性.胸部CTで縦隔腫瘍を疑われ, 当科へ紹介となった.胸部X線写真では, 縦隔に淡い腫瘤陰影を認めた.胸部CTでは気管分岐部下に, 境界明瞭, 内部均一な腫瘤影がみられた.胸腔鏡下手術によりアプローチしたところ, 食道筋層に覆われた腫瘤が認められた.筋層を鈍的に開排し, 慎重に剥離を進め, 腫瘤を摘出した.術中食道内視鏡およびリークテストを行い, 食道粘膜損傷の無いことを確認した.摘出標本は, 5.0×3.5×2.5cm大の黄白色の腫瘤で, 術中所見および病理組織所見より, 食道壁内に原発したschwannomaと診断した.合併症なく良好に経過し, 15日目に退院した.12か月後の現在, 再発なく健常である.
  • 城塚 透子, 五十嵐 誠治, 清水 秀昭, 尾形 佳郎
    1998 年31 巻11 号 p. 2235-2239
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    表在型食道癌の肉眼型分類においてO-Isep型の腫瘍は粘膜上皮下に胞巣を形成して発育する癌である.われわれは胸部下部食道のO-Isep型腺扁平上皮癌で, 食道固有腺導管由来と考えられた1例を経験した.症例は61歳の男性.1995年10月に健康診断にて食道の隆起性病変を指摘され当院を受診した.内視鏡検査で下部食道に16mm大の隆起性病変が認められ, O-I型食道癌の診断で食道亜全摘術が施行された.肉眼所見は16×10mm大のO-Isep型の腫瘍で, ヨード染色で境界の不鮮明な淡染を示した.組織学的には小胞巣状に増殖する癌で, 粘液を容れた食道腺導管に類似した小腺腔の形成と一部に角化傾向のある充実性胞巣を認めた.癌は粘膜固有層から粘膜下層に増殖し粘膜上皮との連続性は認められなかった.各種特殊染色, 電顕により癌の腺性性格は明らかであった.本症例は食道固有腺導管由来の腺扁平上皮癌と考えられ, 腫瘍形態と組織発生との関連が示唆された.
  • 虫明 寛行, 小橋 雄一, 野村 修一, 藤岡 正浩, 臼井 由行, 佐々木 澄治
    1998 年31 巻11 号 p. 2240-2244
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性, 主訴は心窩部痛.肝前外側区域に径約5cmの腫瘤と膵体部に径約2cmの腫瘤を認めた.画像上は胆管細胞癌, 転移性肝癌, 肝膿瘍, 肝嚢胞腺腫 (癌) 様を呈した.術中迅速病理検査で肝癌と診断し, 肝外側区域切除および2群+αリンパ節郭清を施行した.総肝動脈幹前上部リンパ節に孤立性転移を伴う肉腫様肝癌 (相対的非治癒切除) であった.
    術後2週目頃から術創部の痛みを訴え始め, 術後41日目に腹壁再発が明らかとなった.切除目的で再開腹したところ, 広範な腹膜播種を認め, 術後87日目に癌性腹膜炎のため死亡した.
    肉腫様肝癌は, 浸潤型の増殖を示し, リンパ節などへの肝外転移が高率であり, また急速な経過を示すなどの性格から, これを疑った場合は早期に十分な肝切除とリンパ節郭清が必要である.
  • 近藤 元洋, 實光 章, 一瀬 真澄, 余 みんてつ, 熊野 公束, 高原 秀典, 横山 正, 吉田 圭介, 邉見 公雄
    1998 年31 巻11 号 p. 2245-2249
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の女性.主訴は皮膚黄染.平成7年1月肝S4の肝細胞癌にて肝左葉切除術を施行.平成8年4月黄疸が出現, AFPの上昇も認めた.US, CTにて下部総胆管に径2cm大の円形の腫瘤影を認めた.平成8年5月開腹にて総胆管を切開, 腫瘤を摘出すると径2×3×3cmの表面平滑な茶褐色の腫瘍であり病理組織検査にて肝細胞癌と診断した.術後の胆管造影にて下部総胆管に陰影欠損を認め, また画像上残肝その他に肝細胞癌の再発を認めなかったため, 肝細胞癌が総胆管内に孤立性に転移したものと考え平成8年6月膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では乳頭上約1cmの総胆管壁に腫瘍を認め, 総胆管の他の部位に病理組織学的に異常を認めなかった.この症例では肝癌細胞が胆汁内を浮遊し総胆管壁に着床したと推測されたが, 検索した範囲では文献上このような報告例はなく, 肝細胞癌の再発様式としては非常にまれと考えられたので報告す.
  • 横山 義信, 斎藤 文良, 津沢 豊一, 三浦 二三夫, 斎藤 寿一
    1998 年31 巻11 号 p. 2250-2254
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    内分泌細胞性腫瘍は直腸, 胃, 虫垂に多く見られるが, 胆嚢原発の内分泌細胞癌はきわめてまれである.今回, 72歳, 男性の胆嚢癌の診断で摘出された胆嚢に高分化型腺癌と内分泌細胞癌が共存した症例を経験した.腫瘍は胆嚢底部に位置し, 25×20×20mmの大きさで結節浸潤型を呈し, 肝床部へ直接浸潤していた.また, 肝転移, リンパ節転移を認めた.組織学的には高分化型腺癌と, これに混在して大小不同, 異型性が強くクロマチンの豊富な核を有する小円形の腫瘍細胞が認められ, 充実性または索状に増殖していた.Grlmelius染色でこれら腫瘍細胞の胞体内に多数の好銀性顆粒を認め, 腺内分泌細胞癌と診断した.両者は混在移行する像を有し, 内分泌細胞癌の発生は腺癌の発生と密接に関わっているものと考えられた.
  • 有賀 浩子, 河西 秀, 小池 秀夫, 前田 恒雄
    1998 年31 巻11 号 p. 2255-2259
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の男性. 腹痛と嘔吐を主訴として入院した. 胃内視鏡検査で十二指腸下行脚に粘膜の発赤浮腫および狭窄があり, 腹部超音波検査では膵頭部に約3cm大の腫瘤像を認めた. 膵頭部癌の十二指腸浸潤を疑ったが, 腹部CT検査でlow density mass像は膵頭部外側に位置し, 膵頭部に腫瘍陰影は無くERCP検査でも主膵管に異常はみられなかった. 保存的治療で一時症状は軽減したが, 再び嘔吐を認めた. 腫瘤の増大は認めず. 腹部血管造影検査で膵頭部に中心が抜け静脈相にかけて周囲が徐々に染まる像が得られ, MRI検査ではgroove領域に境界不明瞭な腫瘤像を認めた. Groove pancreatitisも疑ったが膵臓癌を完全に否定できず, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 十二指腸壁から膵頭部にかけて高度な繊維化を認め, segmental groove pancreatitisと診断した. 術後経過良好で約1か月後に退院した. Groove pancreatitisは, 自験例を含め本邦で26例の報告がある.
  • 長谷川 誠, 水谷 和樹, 板津 慶幸, 矢吹 賢, 上坂 克彦
    1998 年31 巻11 号 p. 2260-2264
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は閉塞性黄疸で入院した78歳の男性. PTCDとERCとのはさみうち造影で下部胆管に陰影欠損を認め, PTCSで総胆管内に腫瘍血管を伴う乳頭状の腫瘤を認めた. 造影CTでは膵頭部にlow density tumorとその尾側膵管の拡張を認めた. 画像所見からは, 膵頭部癌か下部胆管癌かの判断に苦慮した. 1996年7月9日, 膵頭十二指腸切除術を行った. 切除標本では, 膵頭上部に3.5×3.0cmの白色の腫瘤が存在し, これに連続して総胆管内を乳頭状に進展するとともに, Wirsung管内にも鋳型状に進展していた. 病理組織学的には, 主病巣は中分化型管状腺癌で, 胆管内, 膵管内に進展した部では乳頭腺癌であった. 標本の肉眼所見, 病理所見を総合し, 膵頭部癌が胆管に浸潤し, 胆管内に乳頭状に発育進展したものと判断した. 膵癌の胆管への浸潤様式は周囲からのしめつけや圧排による狭窄を呈することが多く, 本例のような進展様式はまれである.
  • 馬渕 秀明, 西口 完二, 中田 英二, 太田 雅之, 井上 仁, 児玉 慎一郎, 谷川 允彦
    1998 年31 巻11 号 p. 2265-2269
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    我々は進行空腸癌を合併したPeutz-Jeghers症候群 (以下, P-J症) の1例を経験したので報告する. 症例は43歳, 男性のP-J症患者である. 腸閉塞症にて近医より当院を紹介された. 消化管精査の結果, 胃, 小腸および大腸に多発性のポリープを認め, 腸閉塞症状が反復するため外科的治療を行った. 開腹の結果, 腹膜播種を伴う全周性の空腸癌を認め, 組織学的診断は粘液癌であった. 本例は高度進行癌であったため, どのような経路を経て癌が発生したか推察できなかった. P-J症のポリープの癌化を示唆する報告が増えてきた現在, その癌化の機序は解明されるべき重要な課題であると考えられ, P-J症の診断確定時より癌の合併も念頭においた厳重な経過観察を行う必要があると思われた.
  • 安達 尚宣, 丹野 弘晃, 原田 昭彦, 赤石 敏, 音羽 剛
    1998 年31 巻11 号 p. 2270-2274
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    腹腔内デスモイド腫瘍は家族性大腸腺腫症の患者や消化管手術後に発生することが多く, これら既往のない単独発生症例はきわめてまれであり, 1970年以降本邦報告例は自験例を含め13例にすぎない. 今回, 我々は単独に小腸間膜より発生した腹腔内デスモイド腫瘍を経験したので文献的考察を加え報告する.
    症例は59歳の男性で, 右下腹部腫瘤を主訴に来院し, 同部位に可動性を有する弾性硬な腫瘤を触知した, 消化管透視では上部小腸の圧排像を認めたが, 腸管ポリポーシスの所見はなく, CT, MRIでは内部均一な充実性腫瘍を認めたため, 腹腔内腫瘍の診断で開腹術を施行した. 腫瘍は小腸間膜に存在し, 表面平滑な17×12×9cm大, 球状, 灰白色の充実性腫瘍で, 正常小腸間膜を約0.5-1cm付けて摘出術を施行した. 病理組織検査でデスモイド腫瘍と診断された. 本腫瘍は浸潤性に発育するため再発率が高いが, 本症例は術後2年3か月を経た現在, 再発を認めず健在である.
  • 河合 徹, 服部 龍夫, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 深田 伸二, 湯浅 典博, 林 祐次, 江畑 智希, 瀬古 浩, 鷲津 潤爾
    1998 年31 巻11 号 p. 2275-2279
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性. 1994年6月21日S状結腸癌にてS状結腸切除を施行した. 肉眼所見では2型, 22×16mm, SE, P0, H0, M (-), 組織学的には低分化腺癌, se, ly2, v1, n4 (+), stage IVで大動脈周囲リンパ節に転移を認めたが根治度Bであった. 術後1年4か月に腹部CTにて右副腎に直径約5cmの低吸収域を認めたが, 画像上, 肺, 肝, 骨には転移所見を認めず単独副腎転移と診断し右副腎摘出を行った. 腫瘍は65×45×30mmで硬く, 割面は黄白色充実性であり, 病理組織学的にS状結腸癌と同様の病理所見を呈しており副腎転移と診断された. 副腎摘出1年1か月後腹部CT, 骨シンチグラフィーにて大動脈周囲リンパ節再発, 胸椎転移を認め, さらに7か月後, 下行結腸癌を合併し切除したが術後肺炎のため死亡した. 臨床的に大腸癌副腎転移例は全身諸臓器に転移を伴う例が多いが, 他の転移巣が無いか, あるいはコントロールできる場合には切除の適応がある.
  • 金子 順一, 今井 直基, 立山 健一郎, 角 泰廣, 坂東 道哉, 東 正樹, 吉田 直優, 東平 日出夫, 尾関 豊
    1998 年31 巻11 号 p. 2280-2283
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性. 腹部全体の痛みを訴え近医を受診した. イレウスの診断で保存的治療を受けたが改善せず, 著明な貧血と白血球増多を認めたため, 当院へ転院した. 来院時, 腹部は膨隆し, 圧痛および筋性防御を認めた. 腹部単純X線と腹部CT検査では拡張した小腸ガス像と鏡面形成を認めた. 絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した. 開腹すると, S状結腸間膜に直径約2.5cmの異常裂孔が存在し, 小腸が150cmにわたり貫通して絞扼されていた. S状結腸間膜裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断した. 壊死腸管は切除し, 裂孔は閉鎖した.
    術後経過は良好で第14病日に軽快退院した. S状結腸間膜裂孔ヘルニアはまれであり, 文献的考察を加えて報告した.
  • 大東 誠司, 小川 真一郎, 柵瀬 信太郎, 西尾 剛毅, 荒川 健二郎
    1998 年31 巻11 号 p. 2284-2287
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性. 肛門痛と出血を主訴に近医を受診し, 10時方向に弾性, 硬の腫瘍を指摘され当科に紹介された. 内視鏡では歯状線上に浅い潰瘍を有する管外性の腫瘍で生検で腺癌と診断された. 手術は腹会陰式直腸切断術および膣後壁合併切除術を行った. 病理組織学的には粘液癌で, 内外肛門括約筋層を中心に進展しており肛門腺由来と診断された. 大きさ27×15×18mm a1n0H0P0M (-); stage II ly1 v3 ew0であった. 術後5か月後に右鼠径リンパ節転移で再発し, 鼠径部リンパ節郭清術を追加したが, 現在のところ新たな再発は認めていない. 肛門腺由来粘液癌は肛門管癌のなかでもまれであり, 進行は緩徐あるが鼠径リンパ節転移が多く遠隔転移さらには局所再発が問題とされている. このため早期発見が重要であり, 痔核関連疾患に類似した初発症状を伴うことが多い本疾患を, 初診時に見逃さないことが肝要である.
  • 児玉 雅治, 板野 聡, 寺田 紀彦, 堀木 貞幸, 後藤田 直人
    1998 年31 巻11 号 p. 2288-2291
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    患者は62歳の男性. 60歳のとき両側鼠径部ヘルニアの手術を受けたが, 術後1か月目より右鼠径部から右陰嚢に腫瘤の脱出を認め, 排尿異常も出現した. CTでは右陰嚢内に腫瘤陰影が認められ, 脱出したものは膀胱と腸管が考えられた. 術中, 右鼠径部内側に小さなヘルニア嚢を認め, 術前に触れた手拳大の腫瘤はヘルニア内容とは別のものと判断し, 膀胱内留置カテーテルに生食を注入したところ, 腫瘤は膨張したため腫瘤が膀胱であると判断し, 切除することなく還納した. 鼠径ヘルニア, もしくは大腿ヘルニアの手術に際して本症の存在を念頭におくことも必要と考えられる. また, 術中にヘルニア嚢以外の腫瘤を認めた場合, 安易に切除せず, 膀胱などの可能性を考慮すべきで, 確認は膀胱内カテーテルへの注入法が容易で有用であると考えられた.
  • 小林 理, 鈴木 一史, 吉川 貴己, 利野 靖, 円谷 彰, 西連寺 意勲, 本橋 久彦
    1998 年31 巻11 号 p. 2292-2296
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌の腹膜再発の早期診断は困難である. 我々は診断的腹腔鏡 (以下, DLと略記) にて腹膜再発の早期診断が可能であった1例を経験したので報告する. 症例は平成4年9月に胃癌にて根治度Bの手術が施行された. 術後5年5か月後の平成10年2月に上腹部痛を訴えた. CTとUSでは胆石を認めたのみであった. 血清CEAが4.5ng/mlと上昇しており, 入院精査となった. 再入院後の検査では再発所見はなかった. 腹痛は持続していたためにDLを施行した. 所見はダグラス窩に径2mmの3個の結節を認めた. 2個の肉眼所見は表面と辺縁の不整を認めた. その近接所見は腹膜の血管からコイル状の毛細血管が結節に流入していた. 結節は肉眼所見から腹膜播種と診断し, 鏡視下に摘出した. 病理所見は胃癌の腹膜再発であった. DLは開腹に比べ容易に腹腔内を観察可能で, 小播種巣の拡大観察も容易で, 腹膜再発診断および治療方針確定に低侵襲で有用な手技である.
  • 中井 健裕, 谷村 弘, 内山 和久
    1998 年31 巻11 号 p. 2297-2301
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆石症術後の胆汁瘻に対する治療法として内視鏡的経鼻胆道ドレナージ (ENBD) の有用性について検討した. 1975年から1995年までに教室で施行した胆石症手術1,389例中25例 (1.8%) に術後胆汁瘻を認めた. 胆汁瘻に対する治療法の内訳は保存的治療が15例, 再手術が6例, ENBDが4例で, ENBDは他の治療法に比べ胆汁瘻発生後の入院期間は短かった. ENBDを施行した4例は, いずれも胆嚢管断端からの胆汁漏出が原因で, 1例が術直後からの胆汁漏出で, 3例が術後第7-8病日に発生した遅発性胆汁瘻であった. ENBD施行直後から胆汁漏出は消失し, 炎症所見も速やかに消退した. 6-13日後の胆道造影で造影剤の漏出は消失し, ENBDチューブの抜去は6, 8, 13, 13日 (平均10日) 後に行い, 再開腹を行うことなく治癒した. ENBDは安全性と治療効果の面から術後胆汁瘻に対する非観血的治療として有用である.
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