症例は59歳の女性.主訴は皮膚黄染.平成7年1月肝S4の肝細胞癌にて肝左葉切除術を施行.平成8年4月黄疸が出現, AFPの上昇も認めた.US, CTにて下部総胆管に径2cm大の円形の腫瘤影を認めた.平成8年5月開腹にて総胆管を切開, 腫瘤を摘出すると径2×3×3cmの表面平滑な茶褐色の腫瘍であり病理組織検査にて肝細胞癌と診断した.術後の胆管造影にて下部総胆管に陰影欠損を認め, また画像上残肝その他に肝細胞癌の再発を認めなかったため, 肝細胞癌が総胆管内に孤立性に転移したものと考え平成8年6月膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では乳頭上約1cmの総胆管壁に腫瘍を認め, 総胆管の他の部位に病理組織学的に異常を認めなかった.この症例では肝癌細胞が胆汁内を浮遊し総胆管壁に着床したと推測されたが, 検索した範囲では文献上このような報告例はなく, 肝細胞癌の再発様式としては非常にまれと考えられたので報告す.