日本消化器外科学会雑誌
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2, 3型進行胃癌に対するp53異常蛋白発現の臨床的意義と予後
梨本 篤佐々木 壽英田中 乙雄筒井 光広土屋 嘉昭牧野 春彦
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1998 年 31 巻 3 号 p. 819-824

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抄録
他病死を除いた2, 3型進行胃癌106例を対象に, p53蛋白の異常発現を免疫染色法 (ABC法) にて解析し, 臨床病理学的諸因子と対比しながら予後因子になりうるか否か検討した. なお, p53陽性細胞が10%以上を陽性, 10%未満を陰性と判定した. 成績:(1) p53蛋白の陽性率は47.2%であった.(2) p53陽性例の遠隔成績 (5生率40.0%) は, p53陰性例 (5生率60.7%) より明らかに不良であった.(3) 単因子解析ではリンパ節郭清度, 占居部位, T因子, N因子, P因子, H因子, t因子, n因子, ly, v, 根治度, p53が予後因子であった.(4) Coxの比例ハザードモデルによる多変量解析では, 根治度>>リンパ節転移 (n)>占居部位の順に予後に影響を与えていた. 結語: 免疫組織染色による検討にて, p53は独立した予後因子にはなりえないが, 予後不良な2, 3型進行胃癌症例の予測が可能であり, 拡大リンパ節郭清などの拡大手術やintensive chemotherapyの適応を決定する上で参考となりうる.
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