抄録
胃切除後胆石予防を考慮した迷走神経温存胃切除111例 (幽門温存53例, 幽門非温存58例) を対象として, 臨床的検討を行った. 胆石発生頻度は10.8%(12/111) であった. 迷走神経温存様式と胆石発生頻度についてみると, 肝枝14.8%(8/54), 肝枝・幽門枝12.5%(2/16), 肝枝・腹腔枝7.4%(2/27), 肝枝・腹腔枝・幽門枝0.0%(0/14) の頻度であった. すなわち対象を腹腔枝との関連から2分した検討では, 腹腔枝温存4.9%(2/41), 腹腔枝非温存14.3%(10/70) の頻度で, また幽門枝温存30例の検討からも腹腔枝温存の有用性が示唆された. 幽門温存との関連からは幽門温存11.3%(6/53), 幽門非温存10.3%(6/58) と, ほぼ同率の頻度であった. 以上のことから, 胃切除後胆石予防のより効果的な迷走神経温存様式として, 幽門温存の有無にかかわらず肝枝に加え腹腔枝温存の必要性が示唆された. また幽門温存の有用性については, その意義は少ないものと考えられた.