進行胃癌を併存した完全内臓逆位症の1例を経験し, 自験例を含めた55例につき文献的考察を加えた.
症例は66歳の男性で, 学童期に右胸心を指摘されていた. 今回, 吐血を主訴に来院し, 精査の結果進行胃癌と診断され開腹術を施行した. 癌は胃体上部小彎側に存在し, D2リンパ節郭清を伴う胃全摘術とρ型Graham変法による再建術を行った. 病理組織検査でpap>tub, se, INFβ, int, ly2, v2, ow (-), aw (-), n1, H0, P0のstage IIIaであった. 内臓逆位症は胃, 肝臓, 膵臓, 主要血管系を含め上腹部内蔵がすべて左右逆転位に存在していた.