日本消化器外科学会雑誌
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直腸癌手術後に上腸間膜動脈症候群をきたした1例
濱崎 達憲森 尚秀和田守 憲二岡 正朗
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1999 年 32 巻 12 号 p. 2689-2693

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抄録

上腸間膜動脈症候群 (以下, SMASと略記) は急激な体重減少を契機として発症することが多く, 原則的には保存的治療が奏効する. われわれは, 直腸癌の腹会陰式直腸切断術後にSMASを発症し, 保存的治療が無効で手術を施行した症例を経験した. 術後に小腸が小骨盤腔に落ち込み強固に癒着して腸間膜根の過緊張をきたし, 上腸間膜動脈が十二指腸水平脚を圧迫したことが原因であった. これに対して十二指腸授動術を行い, いったんは軽快したがSMASは再発した. 再手術では十二指腸空腸側々吻合術を施行した. 術後8年経過した現在に至るまで腸閉塞は起こさず, 良好に経過している.SMASの手術適応は諸家によりさまざまであるが, 上部消化管造影と超音波検査とをあわせて腸間膜根部の可動性を適切に評価することが治療方針を決定する上で重要である. 手術術式は, 十二指腸空腸側々吻合術が, 手技的にも簡単で吻合口も十分にとれ治療効果も確実な方法として推奨される

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