1999 年 32 巻 8 号 p. 2077-2084
肝虚血再灌流時の肝および血中過酸化脂質動態とその測定意義を明らかにするため, 肝細胞膜主要脂質の第1次過酸化物であるphosphatidylcholine hydroperoxide (PCOOH) の肝組織と血中の濃度をCL-HPLC法で検討した. ブタを用いて, 肝流入血行路遮断を10, 20, 30分間施行した. 肝energycharge と動脈血中ケトン体比は虚血時間が長いほど著明に低下し, 再灌流後に回復したが, alanineaminotransferaseと肝組織PCOOHは再灌流により経時的に上昇し, 還元型グルタチオンは経時的に減少した. 末梢血PCOOHは, 肝組織および肝静脈血のPCOOHとの間に極めて強い正の相関関係が認められた (r=0.978, 0.989). 以上から, 肝の再灌流障害発症には活性酸素による膜脂質過酸化が強く関与し, 末梢血PCOOHは再灌流障害を直接的に, かつ鋭敏に把握する有用な指標となる可能性が示唆された.