日本消化器外科学会雑誌
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舌転移をきたした胃癌の1例
安本 和生平野 晃一川島 篤弘
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1999 年 32 巻 8 号 p. 2105-2109

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抄録

胃癌術後に舌転移をきたしたきわめてまれな症例を経験した. 症例は65歳の男性. 胃体上部の進行胃癌のため, 胃全摘術とD2リンパ節郭清を施行した. 病理組織学的には, 中分化型管状腺癌, 3型, ss, ly0, v2, n1で, 総合的進行度はH0, P0, t2, n1のstage IIであった. 術後約1年目に, 血清CA19-9値の再上昇を認め, 同時期に臍部右側に皮下腫瘤が出現した. 病理組織学的に胃癌の皮膚転移と診断した. 血清CA19-9値はその後も漸増し, 経過中舌左側の瀰漫性腫大も認められた. 舌腫大部からの生検組織像とCA19-9免疫染色陽性所見から胃癌の舌転移と診断した. 自験例は舌, 皮膚およびリンパ節以外には明らかな遠隔転移を有さなかった. また, 癌関連遺伝子の検討では胃原発巣の腫瘍先進部, 舌および皮膚転移巣においてp53の強発現を認めた. p53遺伝子変異が異癌の進展に関与している可能性を示唆した.

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