日本消化器外科学会雑誌
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原発巣切除後9年目に肝転移を来たした非機能性膵島腫瘍の1例
金高 賢悟小原 則博湯沢 浩之濱田 貴幸粟津 諭山田 雅史前田 潤平宮田 昭海天野 実河合 紀生子
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1999 年 32 巻 8 号 p. 2129-2133

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抄録

非機能性膵島腫瘍が原発巣切除後9年を経て肝転移を来たし, 肝切除後1年間以上再発なく経過している1例を経験した. 症例は65歳の男性. 1987年, 膵外発育型膵島腫瘍に対し腫瘍を含めて膵尾側部分切除術を施行した. 以後, 近医にて経過観察していたが, 1996年7月, 腹部エコーにて肝右葉に多発腫瘤を認め, 当科再入院となった. 腹部CTでは周囲が良好に造影され, 中心部に壊死を思わせる低吸収域を伴っていた. 他に原発と思われる病巣が存在せず, 膵島腫瘍の肝転移再発を疑い, 肝右葉切除術を施行した. 病理組織学的所見より, 非機能性膵島腫瘍の肝転移再発と診断したが, 興味深いことに核DNA量解析では原発巣がdiploidであったのに対し, 転移巣ではaneuploidyを呈した. 術後2年を経過するも再発なく生存中であり, 膵島腫瘍は発育速度が緩徐であるため, 転移巣に対しても積極的な外科的切除にて良好な予後が期待できると思われた.

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