1999 年 32 巻 8 号 p. 2139-2143
イレウスを契機に発見された, 多発小腸瘻と異所性胃粘膜を伴う重複腸管の1例を経験したので報告する. 症例は71歳の女性. イレウス症状にて, 当科紹介受診. 腹部は膨満し, 軽度の圧痛, 筋性防御を認めた. 腹部単純X線およびCTにて, 高度に拡張した小腸ガス像を認めたことより小腸イレウスと診断, 同日, 緊急開腹術を施行した. 手術所見はトライツ靭帯より約130cm肛門側の小腸間に1か所の瘻孔形成を認めた. また, 回盲部より約100cm口側に高度に拡張した小腸が癒着, 同部位口側に近接して重複腸管を認めた. さらに高度に拡張した小腸間に計3か所の瘻孔形成を認めた. トライツ靭帯より約130cm肛門側の瘻孔部分は瘻孔切除にとどめ, 重複腸管は拡張腸管とともに切除し手術を終了した. 病理組織所見では小腸本管に異所性胃幽門腺を認めた. 本症例は, 胃所性胃粘膜より瘻孔が形成されたことが, イレウスの一因となった極めてまれな症例と考えられた.