1999 年 32 巻 9 号 p. 2292-2295
患者は胆嚢摘出術の既往を有する49歳の男性で, 下腹部痛と下痢を主訴として当院を受診した. 大腸内視鏡検査では肛門縁より10cmの直腸に径5mmで二段隆起を伴う隆起性病変が認められた. 腺管状腺腫の診断で内視鏡的ポリペクトミーを施行したところ, 組織学的にはsm massiveの中分化腺癌で, 摘除断端陽性と診断された. 追加腸切除の適応と考えられ, ポリペクトミーの4週後に第2群リンパ節郭清を伴う低位前方切除術を行った. 組織学的に癌遺残はみられなかったものの, 郭清された計16個のリンパ節のうち3個 (#251) に転移が認められた.
本症例は, 径5mmの小さいIs型癌の中にもsm癌が存在することと, 隆起型病変では特に二段隆起などの所見に注目した詳細な観察を行うことでsm癌を診断することが可能であることを示した点で貴重であると考え報告した.