2000 年 33 巻 11 号 p. 1811-1815
食道静脈瘤に対する胃上部副血行路郭清+胃上部切除+脾摘除術 (以下, TEPG) の施行後に発生した胃癌に対し, 残胃の血行を検討し幽門側胃切除を施行しえた2例を経験した. 症例1は61歳の女性で, 肝硬変に伴う食道静脈瘤に対しTEPGが施行され, 術後17年目に胃下部にIIa+IIc型胃癌を認めた. 症例2は71歳の女性で, 肝硬変に伴う食道静脈瘤に対してTEPGを施行し, 術後2年目に胃中部に3型胃癌を認めた. 両症例とも術前に腹部血管造影X線検査を施行し残胃上部への血行路を確認し術中に温存することにより幽門側胃切除を施行し, 術後は重篤な合併症もなく術後5年経過した後も胃癌の再発を認めなかった. 以上より, TEPG施行後に合併した胃癌症例に対し, 進展度に応じて手術侵襲の軽減およびQOLの向上を求めての胃全摘を回避した幽門側胃切除は可能で良好な予後が得られた.