2000 年 33 巻 11 号 p. 1806-1810
卵巣転移により発見され, Dieulafoy潰瘍型出血を伴い, びまん性骨転移によりDICを合併した早期胃癌の1症例を経験したため報告する. 症例は42歳の女性で, 両側卵巣腫瘍切除術を受けた. 左が20cm, 右が8cmの充実性の卵巣腫瘍で, 組織学的にはsignet ring cell carcinomaであった. 内視鏡で胃体上部にIIc病変を認め, 生検でtub2>sigであった. 骨シンチで全身にびまん性転移を認め, 骨生検でもsignet ring cellを認めた. MTX-5FU療法を開始したが消化管出血を来たし, 内視鏡で病変部に噴出性のDieulafoy潰瘍型の出血を認め, クリッピングしたが再出血し緊急手術となった. T1, N (-), H0, P0, M (+) で, 幽門側胃切除を行った. 組織学的にはtub2>sig, sm1, n (-) であり, 粘膜下層に比較的太い動脈を認めた. 血小板は徐々に低下し, 骨転移に伴うDICと診断しFOYを投与し, MTX-5FU療法を再開するも脳硬膜下出血を合併し死亡した.