2000 年 33 巻 11 号 p. 1849-1853
症例は60歳の男性. 下血を主訴に当科を受診. 大腸内視鏡検査で下部直腸にI sp, その口側にSMT様病変を認め, 前者の生検の結果はgroup Vであった. また血清CEAは128.5ng/mlと高値を示した. 下部直腸癌にリンパ節転移または粘膜下腫瘍を合併したものと診断し, 腹会陰式直腸切断術 (D2) を施行. 切除標本ではRbに25×20mmのI spと60×40×30mmのリンパ節転移を認めた. 病理組織学的診断はwell differentiated adenocarcinoma>mucinous carcinoma, sm2, ly2, v1, n1 (+), Dukes Cで, 粘膜表層部は高分化腺癌, 粘膜下組織およびリンパ節転移は粘液癌が主体であった. 本症例は大腸粘液癌の浸潤能および転移能の高さを示唆しうる点において興味深い症例と思われた.