日本消化器外科学会雑誌
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肝嚢胞に隣接して発生し嚢胞内容液と血清CEAが異常高値を示したS状結腸癌肝転移の1例
今井 寿足立 泰太田 博彰佐治 重豊
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2002 年 35 巻 1 号 p. 49-53

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抄録

73歳の女性が上腹部痛で来院し, 精査結果, S状結腸癌と血清CEAの異常高値 (19.5ng/ml) および腹部超音波検査で肝右葉に径10cm大の嚢胞を指摘され, 1999年4月30日, 結腸切除術を施行された.病理診断は壁深達度seの中分化型腺癌でリンパ節転移は陰性であった.術後低下した血清CEAが再上昇し, CTで肝嚢胞頭側の腫瘍と, それによる嚢胞の圧排変形が見られた.試験穿刺した結果, 内容液CEA値は38, 900ng/mlで, 腫瘍生検で中分化腺癌が確認され, 2000年3月25日に肝右葉切除を施行した.病理組織学的に肝割面でS8領域に6×5cm大の腫瘍が肝胞を圧排して存在していたが, 嚢胞壁や内部への癌浸潤はみられなかった.術後血清CEA値は漸次低下し, 術後6か月目の現在, 再発徴候なく元気に生存中である.肝嚢胞内容液のCEA異常高値と肝転移との関連で興味ある所見と思われ, 若干の考察を加えた.

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