2002 年 35 巻 1 号 p. 78-82
消化器出血を契機として発見された小腸原発gastrointestinal stromal tumor (GIST)の2例を経験した.症例1は80歳の男性.タール便を主訴として来院.Treitz靱帯より約10cm肛門側の空腸に, 内腔に突出する径約3cmの粘膜下腫瘍を認め, 手術施行.病理組織学的検索にて, low-grade malignant GISTと診断され, 免疫染色にてCD34に陽性, α-SMAに一部陽性で, 平滑筋への分化傾向を示した.症例2は73歳の男性.下血を主訴として来院.小腸壁と連続する腫瘤を認め, 消化管出血シンチにて小腸への出血を確認したので手術施行.病理組織学的検索にて, malignant GISTと診断され, 免疫染色にてCD34に陽性, S-100に一部陽性で, 神経への分化傾向を示した.本邦での小腸原発のGISTの報告例は, 自験例を含めて9例であり, 内6例は悪性または悪性を疑わせるものであった.小腸原発のGISTは悪性の可能性が高く, 術後も十分な経過観察が必要と思われた.