抄録
症例は45歳の男性で, 1986年, 発熱, 皮疹, リンパ節腫脹にて発症し, 全身性エリテマト-デス (systemic lupus erythematosus: 以下, SLE) と診断された. 2003年1月17日より発熱・嘔吐・腹痛を認め, 1月24日の腹部CT検査にて, 腹腔内遊離ガスを認め, 消化管穿孔, 汎発性腹膜炎と診断し, 同日, 緊急開腹手術を施行し, 壊死した直腸S状部に穿孔を認めた. 組織標本より, 壊死型虚血性腸炎と診断した. 術後, エンドトキシン吸着療法・持続的血液濾過を導入し, 集学的治療にて軽快した. 自験例のように, SLEに消化管穿孔を伴った症例は, 本邦で過去28年間に23例報告されている. なかでも23例中9例が死亡し, そのうち5例が下部消化管穿孔であった. SLEの経過中みられる消化器症状として穿孔はまれではあるが, 発症すると致死率は高く, SLE患者が腹部症状を訴えてきた際には, その存在と危険性を十分に理解する必要があると考える.