日本消化器外科学会雑誌
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無症候性肺動脈血栓塞栓症を伴うS状結腸癌の1例
竹島 薫山藤 和夫朝見 淳規林 憲孝馬場 秀雄岡本 信彦及川 太松井 淳一
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2007 年 40 巻 9 号 p. 1636-1640

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抄録
症例は73歳の男性で, S状結腸癌と診断され精査・手術目的にて入院した. 術前の胸部CTにて, 右肺動脈本幹および左肺底動脈に浮遊血栓を認め, 肺血流シンチおよび下肢静脈造影検査にて下肢深部静脈血栓症および無症候性肺塞栓症と診断し, ヘパリンによる抗凝固療法を開始した. ヘパリン投与開始14日目に施行した肺動脈造影検査にて左右肺動脈内に血栓を認めなかったため, 術前日に下大静脈フィルターを留置し手術を施行した. 術式はS状結腸切除術で, 術中はヘパリン低用量投与 (200単位/時間) および弾性ストッキングを使用した. 術後2日目よりヘパリンを400単位/時間にて投与しワーファリンを術後8日目より開始しINRが2.0を超えた時点でヘパリンを中止し維持療法を続行した. 消化器外科領域では手術を必要とする患者は肺塞栓症の高リスク群であり無症候性肺塞栓症の可能性も念頭にいれ周術期の管理を行うことが求められる.
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