1994 年 1 巻 p. 59-68
わが国の医療診療報酬制度は、医療サービス価格が政府によって決定されているという点で政府規制産業に共通の特徴を持っている。そこでは建て前としてサービス価格は「原価」を反映せねばならないとされているが、病院施設や医師・看護婦などは共通費の性格が強く、原価とは伝統的な会計のルールを踏襲することに他ならず、経済的な意味での効率性とは無縁である。しかし国民経済的に見て医療の機会費用は大きく、これを合理的に供給するメカニズムを模索していくことが必要である。規制緩和とともに提唱され、欧米では広く普及しているプライス・キャップ制は、規制産業の伝統的な価格規制方式に代わるものとみなされている。この方式にはさまざまな特長があり、これを医療診療報酬制度の改革に応用するとしたときの基本的な論点はどこにあるかを、本論文では単純なモデルを用いて検討する。