わが国の今後の医療費政策の基本的方向を考えていくにあたっては、これまでの医療費増加のトレンドを中長期的な視点から捉え直し、診療パターンの変化や技術進歩を含めた医療費増加の原因の中身に立ち入った分析を行うとともに、経済成長全体の動向を相関的ににらみつつ「医療費増加と経済成長」をめぐる今後の展望を得ていく必要がある。こうした観点から、本論文では、第一に、わが国の医療費の増加構造を途上国にも視野に入れた国際的な視点から分析し、その特質と医療費抑制効果の原因を明らかにし、第二に、医療費増加にとって実質的に主要な要因となる「アクセス、技術革新、高齢化」の三者を機軸として、経済成長の動向を視野に入れながら今後の医療費増加についての基本的な展望を示す。