医療の質を維持・向上させつつ効率化を図ることは、医療費高騰に悩む先進国共通の政策目標である。日本では自己負担比率を上げることによる需要サイドの受診抑制が主たる政策手段になっているが、米国では、病院・医師などの供給サイドに対する経済的インセンティブを、過剰医療から適正ないし過少医療へと転換する政策が、主となっている。結果として、診療内容と財政リスクを総合的に管理する医療提供・医療保険プランであるマネジドケアが急速に普及した。
マネジドケアに対する関心は非常に高いので、米国のみならず日本でも数多くの研究・記述が存在する。しかし、その多くは制度の記述や概念整理が中心であり、学術的な観点から、マネジドケアの問題点を整理し、指摘したものは意外に少ない。制度の実態を把握するには、学術的な研究のみでは足りず、雑誌などの記述に頼らざるを得ない側面もある。しかし、実証研究等で明らかになっている部分を明確にしておく意義は小さくない。
本研究では、マネジドケアをキーワードとする英語文献数3,600強から約100の重要文献を抽出し、マネジドケアと医師・病院・消費者の行動パターンの変化、医療費への影響等を学術的に精査した。