2002 年 11 巻 p. 63-89
介護保険施設における全室個室、ユニットケアの導入(新型特養)により、今後、これらの施設は「介護の場」から「生活の場」へと変化していくと考えられる。高齢者の生活の場として、自らの人生を閉じる場所としてふさわしい居住環境を整えるために、実証的研究に裏付けられた方向性が示される必要性がいよいよ高くなっているといえる。本研究では個室化、ユニットケアの有効性を検証し、その方向性の必然性、妥当性を裏付ける論理を組み立てることを第一の目的とした。個室化・ユニット化に係る基本的な考え方や個室化・ユニット化をめぐる論点の整理をおこなったうえで、実際に個室化・ユニット化を導入した事例の追跡調査のデータによりその論点を裏づけている。また、新型特養の新築及びそれに向けた改修のための留意点を整理しており、介護保険施設の設置・運営を検討している事業者や事業者を指導する立場にある都道府県担当者の施設整備の手引きとして活用されることを期待している。