数年来、薬価差に過敏に反応する医療機関が、薬剤を過剰使用しているとの批判があり、薬価差圧縮のため薬価の引下げが継続されてきた。しかし、その効果についての実証分析は十分なされていない。本稿では、医療機関における薬剤の使用実態を分析に反映させるために各薬剤の平均1日使用量に着目し、1994~1998年の医薬品卸の実取引データを用いて、医薬品需要と薬価差との関係を分析し、さらに医療機関特性別にその結果を比較検討した。
3慢性疾患(高血圧、高脂血症、糖尿病)に対する医薬品需要は、疾患別に捉えると薬価差に弾力的で、推計値もほぼ同じレベルであったが、決定係数や推計値は最近になるほど低くなる傾向を示した。この傾向には医療機関の設立主体や病床規模により若干差があったものの、地域差は顕著には見られず、総じて医薬品需要は最近になるほど薬価差を重視しなくなる傾向にあることが示唆された。