本論文では製薬企業のR&D成果をもたらす諸要因を多面的に検討している。特に、R&D拠点(ラボ)が行う大学や研究機関やその他企業などとの対外的交流および社内の他のラボとの交流が、ラボのR&D成果にいかなる影響を及ぼすかに分析の焦点を絞った。R&D成果を多面的にとらえることにより、基礎研究、特許、臨床開発いずれかの目的かにより、こうした要因の効果も変わることを明らかにした。たとえばラボの基礎研究成果のためには現地の大学との密度の高い交流が高い効果を与えることや、臨床という下流活動の成果には社内他ラボとの知識の交換が有効なことが判明した。これらの結果は、アンケート調査と同時に行ったフィールドワークから得られた定性データからの知見とも照らし合わせて検討した。