2006 年 18 巻 2 号 p. 95-104
我々は、病院データウェアハウスシステムに蓄積された情報を元に、DPC別の診療コストを算出し、その医業収支に与える影響要因分析を可能とするDPC別診療コスト分析データウェアハウスシステムを構築した。本システムでは、2003年4月から2005年3月までに鹿児島大学医学部・歯学部附属病院を退院した患者を対象に、医療行為単位、日別費目単位、入院単位の複数の粒度をもっ収支情報を蓄積し、集計情報から詳細情報へと分析を進めるドリルダウン分析を可能とした。
本研究で開発したシステムの評価実験として、2004年度にDPCの再評価対象となった悪性腫瘍に関するDPCと診断された患者についてDPC別収支分析を行った。その結果、当院では急性白血病、非ホジキンリンパ腫、肝・肝内胆管の悪性腫瘍の医療費率が高い傾向にあり、肝・肝内胆管の悪性腫瘍の症例数がもっとも多いことが判明した。これらのDPCに診断された症例の中から医療費率の高い患者を選択し、収支の累積変化についてドリルダウン分析を行った結果、在院日数が延長すると医療費率が上昇する傾向が見られた。これらの結果よりDPC等のケースミックス分類による包括評価制度では、自院におけるケース別のコスト分析は病院経営上重要であると思われた。