2007 年 19 巻 1 号 p. 5-20
2000年以降のわが国高齢者ケアについては、介護サービス市場の発達と、その“推進エンジン”の機能を担う介護保険制度が、要介護者・要支援者および家族の生活(の少なくとも一定部分)を支えてきた。本稿では、政策研究を志向する次世代の研究者に材料を提供する目的で、介護保険と介護市場をめぐる政策展開のうち、筆者がかかわったいくつかの論点をめぐる議論を整理した。
はじめに主な分析概念を説明した後、介護市場創造の過程を説明する。次いで、医療との「財の性質」の違いから見た介護保険給付と介護報酬を論ずる。そこでは成功報酬と現金給付論にも触れている。続いて、家事援助と施設食住費を例に、介護サービスと保険給付対象の区分に関する進展が示される。さらに、介護情報公表制度の意味を説く。
最後に、この主題に関する今後の展望として、(1)高齢者ケアの長期化と認知症の増大、(2)介護労働市場の変化、(3)施設対在宅の対比:高齢者住宅の整備、(4)地域包括ケアの4点について意見を述べる。