目的:現在の在宅サービスが対応できていない介護負担感を測定し、今後整備すべき在宅サービスや施設への公平な入所基準について検討する。
対象と方法:対象は、中国地方の2つの市に在住する要介護者がいる725の同居世帯である。介護負担の要因には様々なものが考えられるが、特定の介護負担要因に対応したサービスが適切に消費できていれば、その介護負担要因は介護負担として顕在化しないはずである。例えば、夜間介護の必要性があっても、夜間介護に対応したサービスがあれば、夜間介護が必要な要介護者を介護している介護者と夜間介護が必要でない要介護者を介護している介護者の介護負担に差はないはずである。そこで、主介護者の介護負担感尺度を、様々な介護負担の要因に回帰した。介護負担感の指標としては、日本語版Zarit介護負担感尺度を用いた。
結果:以下の数値は、介護負担感尺度の点数である。在宅サービスが対応できていない介護負担要因は、要介護者の不適応行動が激しい場合に事業者側の都合でショートステイの利用を手控えている(14.9)、夜間介護(7.1)、要介護者と主介護者の関係が良くないこと(5.4~15.8)、介護者の自覚症状数(1つに付き2.3)、家事負担(4.6)があった。要介護者の容態の急変可能性が大きいこと(9.4)は負担感を増加させるが、医療体制の整備は負担感を抑制した(-7.6)。身体障害が軽く痴呆が重い場合と身体障害が重く痴呆が軽い場合に、介護負担感が高かった。副介護者が1人増えると負担感は1.7下がった。
考察:現在の在宅サービスが対応できていない介護負担感の要因は多様であり、それらに対応した新しいサービスやサービス提供のあり方の工夫が望まれる。本稿の推定結果より状態像別の家族介護者の介護負担感が計算できる。それは、超過需要状態にある特別養護老人ホームへの公平な入所基準として利用できる。
抄録全体を表示