医療経済研究
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研究ノート
看護師の就業場所の選好
―訪問看護ステーション看護師を対象としたコンジョイン卜分析―
緒方 泰子福田 敬橋本 廸生吉田 千鶴新田 淳子乙坂 佳代
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ジャーナル オープンアクセス

2008 年 19 巻 3 号 p. 233-252

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抄録

背景:人口の高齢化や疾病構造の変化等を背景に、看護ニーズの増大が予想される。しかしながら、看護師がいずれの職場においても充足しているとは限らないのが現状である。特に、在宅ケアにおける役割が期待される訪問看護ステーションでは、常に人員不足の状態にある。これまで、こうした不足人員を満たすために、看護師が就業時に重視する因子に関する実態調査が繰り返し行われてきたが、因子間の相対的な重要度を量的に評価した研究は殆ど行われていない。

目的:①看護師が就業先を決定する際に相対的に重視している職場属性とその効用を明らかにする、②就業先選好に関する仮想的質問の回答の再現性を検証する。

方法:K県の全ステーション313ヵ所への一次調査(調査協力意思の確認)の結果から77ステーション・看護師369人を対象に郵送調査を行った。調査票には、事業所票と看護師票があり、後者では、看護経験、5つの属性(勤務形態、月給、残業時間、職場環境・組織文化、教育・研修)を組合せた仮想の職場10ヵ所の何れかに就業するとした場合の希望順位等を尋ねた。仮想の職場の属性間の相対重要度を明らかにするためコンジョイント分析を用いて分析した。

結果:事業所票は53事業所から、看護師票は64事業所の235人から回答された。「仮想の職場」への就業希望順位を、重複なく回答した221人を有効回答として分析した。回答者は女性99.1%、平均年齢41.0歳、総看護経験は平均15.2年、訪問看護経験は平均5.0年だった。5つの属性の平均相対重要度は、勤務形態47.1%、職場環境・組織文化23.6%、教育・研修10.8%、月給9.8%、残業時間8.8%であり、現実の勤務形態別にも同様の結果であった。看護師が仮想の職場を選ぶ際、どの「勤務形態」を選択するかは、現実の勤務形態と関連した。「月給」の効用値は、家計の年間収入や自身の現実の月給額と関連した。

結論:K県の全てのステーションを対象に、郵送法による就業先選好に関する調査を実施し、コンジョイント分析を行った。多様な勤務形態による求人や、業務上の責任範囲や組織的バックアップ体制などの「職場環境・組織文化」に関する条件を整え、「教育・研修」の機会を確保しておくことは、ステーションの人員確保において重要である可能性が示された。今後は、5つの属性に「職場の種類」を加え、実際の求職者を対象とした場合の就業先決定時に優先される因子を明らかにしていく必要がある。

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© 2008 本論文著者

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