1996 年 3 巻 p. 169-179
最近の調査によれば、わが国における肝臓癌による死亡者数は2万7765人に達し、この20年間では2.6倍に増加している。死亡者数がこのように急激に増加した最大の原因は、C型肝炎ウイルス関連の肝臓癌症例数が増加したためである。また、最近ではC型肝炎ウイルス関連の肝硬変死亡者数の増加も示されている。
肝硬変、肝細胞癌を防止するためにはその原因となっているC型慢性肝炎を治療することが重要であるが、現状ではその有効な治療法はインターフェロンの投与のみである。
近年、わが国においては国民医療費の上昇が著しい。このため限りある資源をいかに有効かつ効率的に使い、医療費を節約するかが社会的に重要な問題となっている。したがってC型慢性肝炎に対するインターフェ口ン療法のような高額医療の対費用効果を明らかにすることは極めて重要な課題である。
そこで本研究においては、C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法の臨床経済研究の現状について文献的に調査し、さらに現在のところ最適と考えられる治療戦略を設定し、それに基づいた対費用効果の算定を試みた。
その結果、C型慢性肝炎に対するインターフェ口ン療法の臨床経済研究論文は国内及び外国の文献をあわせても4編と非常に少ないことがわかった。
さらに、最も安価なインターフェロンα-2aを用いて、最適治療戦略に基づいて100万人のC型慢性肝炎患者にインターフェ口ン療法を施行した場合の総医療費は9.4兆円~11.3兆円となることが判明した。
100万人のC型慢性肝炎患者にインターフェ口ン療法を行わず、従来行われていた治療を行なった場合の総医療費を試算したところ総医療費は14.2兆円となることから、最適治療戦略に基づくインターフェ口ン療法は2.9~4.8兆円の医療費削減効果をもたらすことが判明した。