限りある保健・医療資源を効率的に配分するための判断基準として、ヘルスケア部門における経済的評価の重要性は高まっている。経済的評価にはさまざまな手法があるために、政策担当者や研究者が抱いているイメージが異なり、議論が混乱しているケースがみられる。本研究では6つの手法を採り上げ、そのアウトライン、適性や限界を整理して、評価の目的、対象、視点に応じてどのような経済的評価が望ましいかを明確にした。評価の視点からの整理では社会的視点のみ適用できる手法とそれ以外、評価の対象からの整理ではマクロレベルにのみ適用できる手法とそれ以外に区分された。どちらの場合においても前者は健康への投資論、健康需要論、産業連関分析、後者は費用便益分析・費用効果分析、QALY/DALYによる費用効用分析、HRAを指標とした分析という整理がされた。また、経済的評価は実証研究であるためにデータの存在状況も考慮して適切な手法を選択すべきであると指摘した。