医療経済研究
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研究論文
高齢者の歩行習慣が健康関連QOL に及ぼす影響 - JAGES2019 横断研究―
小牧 靖典斉藤 雅茂平塚 義宗近藤 克則中山 徳良
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2023 年 35 巻 1 号 p. 30-44

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抄録
本稿の目的は2つある。第一に高齢者の一日の平均歩行時間が健康に及ぼす影響を逆の因果(内生性)を考慮して明らかにすること、第二に得られた結果の政策的含意を健康政策と都市政策の2つの観点から考察することである。 対象は、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study: JAGES)が2019 年に実施した「健康とくらしの調査」に参加した要介護認定を受けていない65 歳以上の高齢男性10,058 名、女性10,601 名である。被説明変数は、EQ-5D-5L から算出した健康関連QOL スコアを用いた。内生性に対処するため、操作変数法を用いた解析を行った。操作変数として「徒歩圏内(おおむね1 キロ以内)にある運動や散歩に適した公園や歩道の多さ」を用いた。その結果、平均歩行時間が30 分増えると、健康関連QOL スコアは男性で0.124(0.022)点、女性で0.160(0.032)点高くなった。この結果を、健康状態として意味あるスコア差(Minimum Clinically Important Difference: MID)を考慮して、男女別に健康状態を一段上げる追加の歩行時間を試算した。さらに、健康状態を一段上げる追加の歩行時間が年間医療費に及ぼす影響についても試算した。今回の結果は、公園や歩道が整備され数が増えることで歩行時間が増える高齢者の健康への影響とも解釈できる。今後、健康を視野に入れた都市政策における歩行時間の目安として利用されるとともに将来的な医療経済評価に用いられることが期待される。
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© 2023 本論文著者
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