2000 年 7 巻 p. 101-121
本稿は、健康保険組合のレセプ卜の個票データをもちいて、平成9年9月実施の健康保険制度の改定によって若人(老人医療制度の適用を受けない医療保険組合員とその家族)の外来の受診行動が変わったかどうかについて、統計的な分析を行った。医療需要の指標として、年間のレセプ卜枚数および診療日数を用い、分割表およびHurdle Negative Binomialモデルを用い、改正が、誰の受診行動に影響を与えたかを分析した。その結果、いずれの分析においても、今回の改正が「本人」よりも「家族」の特に高齢者に大きな医療需要抑制効果を持ったことを示した。今回の改正は、本人について医療費負担を2倍に引き上げる一方で、家族については薬剤の一部負担を導入したのみで本人ほどの負担増ではなかったにもかかわらず、需要抑制効果は「家族」のほうに多く現れている。これは、家計としての医療需要を抑制した結果であると考えられる。