2006 年 58 巻 6 号 p. 540-556
地理学は75年に亘って大学の科目として教授されてきた。国立シンガポール大学地理学教室は十分整備された地理科学機関としてシンガポールで唯一のものである。最近15年間(1990–2005)について,本稿では主に地理学教室内のシンガポール出身者の人文地理学における貢献を検討する。
本稿ではシンガポール大学地理学教室が,過去15年間に若い地理学者の加入によって再生をもたらしてきたこと,イギリス的研究システムからアメリカ的研究システムに大学が変わってきたこと,3人(ライリー・コング,ヘンリー・ユング,ブレンダ・ヨー)の地理学講座の研究者が,研究面で触媒的インパクトを与えてきたことを主張する。講座の人文地理学における研究成果は顕著なものであり,それは主に3つの領域への貢献に見られる。すなわち,国家,都市,また都市エコシステムとしてのシンガポール研究,また,ディアスポラ,移動とジェンダー問題,そしてグローバル・シティ,コスモポリタン人口,多国籍企業,グーバル-ローカル・ディアローグを論ずるグローバル化の種々の側面についてである。