人文地理
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論説
近現代木曽川中流部における舟運の変容と川湊の土地所有の変化
林 泰正
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2019 年 71 巻 1 号 p. 29-51

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抄録

本研究の目的は,近代における川舟による河川利用の変化と,それに伴う地域変容を明らかにすることである。とくに,前近代的な交通網から近代的な交通網への変化に伴う資本の流入に注目した。本研究では,第一に,木曽川中流部における川舟による河川利用の形態が鉄道の導入などに伴ってどのように変化したかを明らかにした。そして第二に,木曽川中流部の川湊である土田湊を対象として,具体的な土地利用および土地所有の変化を分析した。土田湊は,近代に地方が経験したあらゆるインパクトが詰まった地域だった。川舟が実用的な交通手段として使われていた1900年代には都市で消費される天然氷を生産する製氷場が立地した。木曽川中流部の川舟は,1910年代以降,実用的な交通手段としての役割を徐々に失っていった。その一方で1920年以降,川舟は,名古屋資本の影響下で観光資源へと転用された。さらに,1940年代に土田湊は川舟とは関係の無い東京資本の軍需企業によって所有された。以上のように,本研究は,木曽川中流部における交通網の変化に伴う資本流入と土地利用変化とをより詳細に明らかにすることができた。

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© 2019 一般社団法人 人文地理学会
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