人文地理
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論説
東京都中央区における民間賃貸住宅居住者の住民特性と移動歴
石川 慶一郎
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2021 年 73 巻 1 号 p. 31-54

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抄録

本稿は東京都中央区の民間賃貸住宅居住者の住民特性と移動歴を明らかにした。中央区の民間賃貸マンション居住の単身者を対象とした質問紙調査では,分析対象者の76.4%が未婚者,16.4%が有配偶者であり,両者の9割以上がホワイトカラー従事者であることが明らかとなった。分析対象者の半数以上を占める25~39歳の未婚者の移動歴をみると,出身地によって異なる傾向が示された。東京圏出身者は学卒後に東京圏郊外や都区部から中央区に転入する傾向があった。一方,非東京圏出身者は,就職を機に一度都区部や東京圏郊外に着地した後で中央区に住み替えるか,転勤や転職を機に非東京圏から中央区に転入する傾向があった。このように未婚者の住居移動の経路は複数に分岐しているが,いずれの場合であっても,彼らの中央区への来住は主として職住近接を志向した自発的移動の結果とみなせる。移動歴について1960~1980年代の郊外化時代の多産少死世代と現在の団塊ジュニア以降の世代を比較すると,後者の移動歴には,未婚者の都心3区への内向移動と未婚者が都心に転入する時の年齢の上昇が生じている。本稿は1990年代後半以降の東京都心3区における人口回復の背景として,団塊ジュニア以降の世代の住居移動に効果を及ぼす未婚期の長期化という家族形成規範の変化とバブル経済崩壊という時代背景を指摘した。

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