抄録
1994年1月から2004年3月の約10年間に当科で入院加療を行った下咽頭扁平上皮癌74例について検討した。各主治医により治療法を選択されていた1994年1月から2000年5月までの43例をA群,早期手術を主とした治療を行った2000年6月以降の31例をB群とした。この治療方針の変更が治療成績にどのように影響したかについて検討を行った。両群間に年齢,性別,発生亜部位,病期分類による差は認めなかった。原発巣に対する手術はA群で62.8%,B群で83.9%であった。統計学的に有意差を認めなかったがA群全体の3年生存率は43.8%,B群全体の3年生存率は70.5%とB群の生存率が高い傾向があった。Stage IIIの症例ではA群の3年生存率は41.7%,B群の3年生存率は85.7%と大きな差を認めた。今後,化学放射線治療等の機能温存療法との治療成績の比較の参考となると考える。