頭頸部癌
Online ISSN : 1881-8382
Print ISSN : 1349-5747
ISSN-L : 1349-5747
基礎
P53/P21経路におけるRad9の役割と頭頸部癌への関与
石川 和宏石井 秀始西野 宏古川 雄祐市村 恵一
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 32 巻 4 号 p. 417-422

詳細
抄録

細胞内でDNAの複製阻害やDNA損傷が生じると,チェックポイントが活性化されて細胞周期抑制と損傷修復,あるいはアポトーシスへと導かれる。Rad9はDNA損傷のチェックポイントに関与する蛋白質で,DNA損傷の認識,DNA修復,アポトーシス等にも役割を演じる。今回我々はp53によるP21の転写調節におけるRad9の直接関与を検討した。非癌細胞ではRad9とp53の結合は紫外線照射により増加した。Rad9のC末端でのリン酸化は両者の結合に影響しないがRad9と結合したp53のリン酸化はDNA損傷に応じて変化した。また上顎洞扁平上皮癌細胞株ではRad9の強発現とp21の発現抑制を認めた。以上よりRad9はp53と結合してDNA損傷に応じた細胞周期調節を行う一方,癌細胞では遺伝子増幅によりRad9が過剰発現し,TP53遺伝子に変異がない場合もp21の発現異常とチェックポイント応答の異常を来すことが示唆された。

著者関連情報
© 2006 日本頭頸部癌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top