2016 年 42 巻 3 号 p. 284-289
口腔がんの術後に生じた実質欠損に対しては,咀嚼,嚥下,構音といった機能面に加え,審美性に配慮した再建術を行わなくてはならない。
術後の咀嚼機能の回復には補綴的アプローチが不可欠で,従来より顎義歯が広く用いられてきた。顎義歯は残存歯や栓塞子を利用して口腔内での安定性を高め,咀嚼のみならず言語,嚥下機能を早期に改善する有用な方法である。しかし欠損が大きく残存歯のない,もしくは少ない症例では顎義歯の安定性は低く,十分な咬合力を回復することはできない。このような症例に対してデンタルインプラントの使用は有用である。
顎義歯やインプラント義歯といった咀嚼機能を回復する補綴治療を可能にするには,再建骨の位置や形態が重要である。しかし顎骨の解剖学的形態は複雑なため,移植骨を用いて再現することは容易ではない。補綴治療が可能な位置,骨量,骨質を確保できていない再建症例も多く,症例によっては追加手術が必要となる。
よって顎補綴治療まで見据えた手術計画を立案し,術前より頭蓋顔面骨模型やコンピューターを用いた手術シミュレーションを行っておくことが必要と考える。