抄録
頭頸部に発生する腺様嚢胞癌はまれな悪性腫瘍である。また舌根部は嚥下機能,構音機能に重要な部位であり,この部位の腫瘍摘出は術後の嚥下障害や構音障害が生じる可能性がある。今回我々は,舌根部に発生した比較的大きな腺様嚢胞癌症例を経験した。腫瘍へのアプローチは下顎骨正中離断で行い,腹直筋皮弁で再建し,術後の嚥下障害が予想されたため喉頭挙上術および輪状咽頭筋切断術も同時に施行した。術後ゼリー食は経口摂取可能であり,発語明瞭度に不十分な点はあるものの日常会話は筆談なしで可能である。本術式はQOLの維持に有用であった。