2002 年 28 巻 1 号 p. 264-268
p53標的遺伝子群の転写活性化を指標に抗癌剤感受性を検索するシステムを構築した。p53遺伝子に変異を有する頭頸部癌培養細胞であるHSG (Asn30Ser) とTYS (Asp281His) にp53標的遺伝子 (p21waf1, BAX, MDM2) プロモーターを含むレポーターを導入し, 抗癌剤 (アドリアマイシン, 5-フルオロウラシル, シスプラチン) 処理による各標的遺伝子の活性化を検討した。抗癌剤処理により, HSG細胞においてはいずれの標的遺伝子も活性化されなかったが, TYSにおいてはp21waf1遺伝子の転写活性が著明に上昇した。また, 両細胞において抗癌剤処理の有無に関らずBAX遺伝子は転写活性化されなかった。TYS由来p53は, DNA障害に際しp21waf1の発現を誘導することにより細胞周期を止めるが, アポトーシスは誘導しないような変異であると考えられる. このように多様なp53機能異常の検索は, 個々の患者に対する治療法 (特に化学療法) の決定に重要な指標となりうると考えられる。