抄録
一般に, 下咽頭腫瘍における遊離空腸移植を除く口腔咽頭再建では, 皮弁, 筋皮弁による再建が多い。今回われわれは, 下咽頭癌における遊離空腸移植を除いた症例で, 皮膚成分を用いない口腔咽頭再建を経験したので報告するとともに考察を加えて報告する。
用いた皮弁は, 空腸5例, 胃壁3例, 腹膜3例であった。空腸を用いた再建では, 咽頭皮膚瘻3例, 口腔底再建1例, 頬粘膜の再建1例であった。胃壁は頬粘膜の再建1例, 口腔底再建1例, 口蓋再建1例であった。腹膜は口腔底に2例, 頬粘膜1例に用いた。
腹膜を用いた2例で, 腹膜は脱落して瘢痕治癒した。空腸による再建例は全て経過良好であった。胃壁を用いた再建では, 2例において胃酸の分泌により潰瘍ができたが, 放射線照射により1例は治癒した。
粘膜を用いた再建は, 工夫次第で皮膚成分を用いた再建より, 有用な再建法になり得ると考えられた。