抄録
目的:筆者らは,センテンスとセンテンスを英語らしく書き連ねるための英語ライティングの技法を考案した.これをもとにした学部生向け英語ライティング教材・科目を開発するに当たって,ライティング技法を例示・演習するための英文素材が必要となった.そこで,薬史を題材とした英文素材を活用して教材を開発し,その有用性を検討することとした.
方法:薬史に関わる図書『Molecules That Changed the World』(K. C. Nicolaou,T. Montagnon 著)を英文素材として選定し,同書の Chapter 13 Penicillin と Chapter 31 Vancomycin,および Chapter 16 Vitamin B12の英文を抜粋・引用して再構成し,新規の英語ライティング教材を開発し,その意義を評価・考察した.
結果:同書の英文は,センテンスとセンテンスを英語らしく書き連ねるための英語ライティング技法を例示・演習するための素材として最適であった.また,アンケート調査より,文理の専攻にかかわらず多くの学部学生が,薬史の物語に興味を持って効果的に英語ライティングを学習できたことが示された.
結論:コンパクトにまとめられた薬史のビッグストーリーは,内容に統一性があり,また適度にサイエンティフィックであるため,広く学習者の関心を引きつけ,英語ライティングの技法の例示・演習のための素材として有効に利用できる.